息をかぞえて

禅・こころとからだ

坐禅を組むと。

汗ばむ陽気にブルゾンをぬぎます。アンダーシャツのすそをジーンズから出すと、こもっていた熱がぬけていきます。風通しがよくなる。

4月6日。新年度、新学期。吉祥寺駅前の混雑も、すこし落ち着いた感じです。

 

いつも朝おきると坐禅を組みます。

チャイハネとかのエスニック雑貨のお店で買ってきたお香をたいて、1から10まで繰り返し繰り返し、息を数えます。

15分。余裕のある時はもう15分。香が燃えつきるのがだいたい15分。

ジャスミンとかサンダルとか、何種類かのいろんな香りをその日の気分でえらびます。飽きがこないように。

顔をあらい、歯をみがき、シャワーをあびて、坐禅を組む。朝ごはんのバナナをたべる。順番は日によって前後しますが、おかげさまで日課のひとつになっています。

なるべくネットをつなぐ前に。ねむりの余韻をいかせるように。頭の中がしずかなうちに。

 

いそがしい時、仕事でテンパってる時、ねぼうしてそれどころじゃない時はさぼってるようですが( 後で気づく)、本当はそういう時ほど坐禅が必要なんですよね。こころをニュートラルにもどしてくれるから。あー、あと落ち込んでる時ね。だるい時。グレーな時。なにもかもめんどくさい時。そういう時はすわれない。

 

すわるの、けっこう体力いりますから。そういう時は二度寝に時間をまわします(笑)。無理しないのも、つづけるひけつと思います。また元気な日に、きっちりすわればいい。さぼってもだいじょうぶ。一度、体に坐禅がインストールされると、勝手に再起動します。すわりたくて、ムズムズしてくる。

 

こころがニュートラルだと、体も軽くなる気がします。空気を入れ、油をさした自転車のように。

僕にはルーズなところがあるので、自転車にこまめに空気を入れたり、油をさすこともなく、ギコギコキーキーと重いペダルをこいでいるのですが、たまに空気を入れ、油をさした時の、スイスイ走ってくれること!

坐禅を組んでから家を出ると、そう、空気をいれたタイヤのように、パンパンの状態で歩けます。パンパンなのは体か、こころか、どこなのか、よくわからないけど。肩の力もぬけ、足腰はじめ体のそこここのいろんな関節も、油をさしたチェーンのように、スイスイなめらかにうごく気がします。

らくな感じです。

礼拝堂の坐禅

かれこれ7〜8年? 指導者について坐禅を組むようになり、それくらい経ちます。

今は広尾の聖心女子大学修道院でおこなわれている坐禅会に通っています。主宰者はカトリック(聖心会)のシスターで、在家の禅団体(三宝禅)でも修行されて禅教師の資格をとられた方です。信仰の有無をとわず、入会制度や会費もない、自由参加の坐禅会をおこなっています。僕も特定の信仰は持たないので、「在家の禅者」という立場で坐禅に取り組んでいることになります。

夕陽が背中から差し込む、こじんまりとした礼拝堂ですわります。1時間を25分ずつ2回にわけてすわります。十字架のイエスの前ですわります。坐蒲(ざふ)の上、脚を組んですわります。

礼拝堂での坐禅は、男性的でモノクロームな寺の禅堂でおこなうのとは、やはり少しちがいます。あたたかくやわらかい静けさ。ふんわりきよめられた感じ。女子修道院ですしね。ユリなど季節の花がいつも活けられており、目に心に、うるおいがもどります。しおれているのを見たことがありません。堂内もとてもきれいに掃除されています。

帰り途はなんだか、花のようにすっきり歩けます。渋谷の人ごみを歩きます。

本当は昨日も坐禅会の日でしたが、友達と会う約束をうっかり入れ、休んでしまいました。ほぼ毎回参加しているのに、たまにど忘れする。手帳を持っているのに、なぜ使わないのか?

ひとつ、ふたつと息を数える。間が抜ける。なかなかなおってくれません。

息をかぞえて

あれもちがう。これもちがう。

なにが正しいかわからなくなって、

ずいぶんたつ。

たしかなものがなくなった。

なんとなくいつも不安だ。

じっとしていられない。

 

ふらふらあるく。

ひまをつぶす。

にげこむように、ねむりにつく。

 

すぅすぅときこえてくる。

ぼんやりとあかるくなる。

すって、はいて、すっている。

さっきまで、

とけてういていたような気もする。

ふうっ、とはく。よだれをぬぐう。

 

すってはく。

ずっと前からくりかえしている。

さいしょにすったのはいつだろう?

 

目やにをこすり、いつものようにすわる。

ひとーつ。

ふたーつ。

すってはいて、息をかぞえる。

みっつ。

よっつ。

チッチチ、チュッチュ。

カー!カー!

クワア!

まわりが白くひろがりはじめる。

名前をつけるなら「朝」。

 

やーっつ。ここの、つ。

十までいったら、一からはじまる。

はじめとおわりがつながっていく。

だんだんしずかになっていく。

つぎめがきえて、わっかになる。

じっとしている。

じっとしている。

 

すって、はく、すってはく。

ここからはなれたことはない。

今日もふらふらあるくだろう。

だけどいつでも、ここにいる。

 

すっている。はいている。

とまることなく、つづいてる。

みんなしってる、たしかなことだ。

ここからはじめようと、わたしはおもう。