息をかぞえて

禅・こころとからだ

鼻で観る

すこし遅くなりましたが、3日前の坐禅会のことを書きます。このところ家ですわる時間をふやしていることもあり、前回の日記で書いたところからもうひとつ、深く静かなところですわることができました。感覚的な話なので、ことばにするのはなかなか難しいですが、やってみます。

 

坐禅の方法はいくつかあって、1から10までくり返し息をかぞえる「数息感(すうそくかん)」、カウントなしで息の出入りを観ていく「随息観(ずいそくかん)」、指導者からいただいた公案に参ずる「公案(こうあん)」、ただひたすらすわる「只管打坐(しかんたざ)」が主なところでしょうか。

僕は数息観がいちばんやりやすくて気に入っているので、家や電車でやる時はだいたいが数息観です。ただ坐禅会ではシスターから公案をいただくので、公案とともにすわります。この日は2回の坐のうち、ひとつを公案にあて、もうひとつは随息観ですわりました。

公案は「師と弟子の間のやりとりのみ、他言無用」というルールがあるので、ここではふれません。ですので、ふたつ目の随息観について書きます。

 

公案がなじまず、気をとりなおそうと始めた随息観。この日二坐めだったこともあってか、呼吸は最初から整っていました。

あくまで感覚的にですが、へその下まで落としこむように、または引きこむように鼻から吸い、口はとじたまま鼻から出していきます。

日ごろさぼっていて久々にすわる時は、息が荒く、乱れています。スー〜〜〜ッと吸って、フーーーッ!と出す感じ。おもいきり力んでますね。これまたイメージですが、鼻からへそ下まで太いホースの中を、空気が上下しているような感覚。それくらい普段の生活では呼吸が浅くなっているんだと思います。ポンプ(強い呼吸)で息を引き上げる必要があるくらいに、胸主導で吸っている。

 

それがすわっているうちに、だんだんと細くちいさな息になってくるのが面白いところです。「ホース」の息だったのが、ストローくらいの細さに。さらに糸くらいに細く。息の強さも「スー〜〜、フーーー!」だったのが、「す、ふっ」くらいになっている。随息観は鼻先を出入りする息の感触で「息を観る」ので、呼吸のかすかな感じがよくわかります。

 

す、ふっ、す、ふっ、すとふ、すとふ………

 

ほとんど息が止まるくらいの。入る息と出る息がひとつになるような。鼻で観ています。

 

浅い呼吸ではありません。腹、腰まで息がみちみちている充実感、安定感がある。そして静か。この日はわりとすぐ、ここに入れました。

 

ぽっかり、バルーンの中にいる感覚。いっしょにすわってる人達ごと。聖堂ごと。この感覚はひさしぶりだな。

 

チカチカゆれるキャンドルのほのおが、やわらかくつたってきます。水の中、月あかりが漂うさざ波のように。

 

 チーーーーーーーーーーン!!!

 

耳というより頭を突きぬけるように、おわりの鐘がビリビリと。

 

あっという間の25分。ちいさな鐘で、さほど大きくない音なんですけどね。